#6 人づくり
「かっけぇー」。
小学四年男児の琴線に触れた、母に連れて行ってもらったコンサート。
そして、「頑張って練習するので楽器を買ってください」とお願いし、
レッスンに通わせてもらった。
私がサックスを手にしたきっかけはシンプルだ。
小学生の頃は、友達ともたくさん遊びゲームもしたが、
やり過ぎて怒られることはなかった。
サックスの練習もしかり、少しやってすぐ終わる。
練習してミスするのが嫌だったから、できないところはやらない。
そりゃうまくならない。
中学生になり、だんだんと将来のことを考えはじめ、
高校からは上京して一人暮らしをして音楽に打ち込みたいと考えるようになった。
何事にも熱中し過ぎることなく無難にこなしてきた思春期だが、
高校受験に向けては、友達と遊ぶより練習、
おなかがすいても練習と、一心不乱に練習に取り組んだ。
その頃にはミスや失敗が大好物になっていた。
ミスをするとそれを二度としないようにすればうまくなる、
失敗は挑戦している証拠だと、練習の成果を積み重ねる喜びに味をしめた。
そのかいあって芸大付属高校に合格。
全国から集まる音楽家の卵たちと切磋琢磨する最高の青春を過ごした。
唯一無二の仲間たちに感化されながら技術を磨き、
難しい曲でも吹けるようになるのがたまらなく楽しかったが、
先生からは器用貧乏だと言われた。
普通なら落ち込むところだが
「おれってやっぱり器用なのか!」
と馬鹿の一つ覚えのように…
大切な何かを見落としていた。
そして物の見事に芸大に落ちた。
合格発表当時のあの世界が止まったような真っ白な空気感は、
今でもよく覚えている。
もう二度と味わいたくはないが、
あの時に完膚なきまでに私の長く伸びた鼻を折ってくれたことには感謝しかない。
そしてゼロからリスタートした浪人生活、大学、スイス留学と、まず人づくりから。
これは母にしきりに言われていたことだった。
「人生は人づくり」だと。
音楽を奏でる前に一人の人間である。
まず生活リズムを適切にして、健全な身体と心をつくるために何を食べるかをよく調整する。
身体が整ってくると自然とやる気もみなぎってくる。
やることをやっている、うしろめたい気持ちが何一つない自分をすがすがしく信じることができる。
成功したらおかげさま、失敗したら自分がまだいたらなかったと、
誰かのせいにすることもなくスッと腑に落とす。
これが私の人づくりの基盤になった。
今、私どもの音楽教室では、2歳から80代まで幅広く音楽を楽しみたいたくさんの方々にお通いいただいている。
子どもたちには、生きる喜びを感じ、人生のあらゆる困難に立ち向かうための自分を信じるマインドを培ってほしい。
大人の方々には、大人になってまた何かを学ぼうと新しい門をたたく、その姿勢にまずリスペクトがある。
もう一度自分のために自分にフォーカスして音楽と向き合い、心から楽しい人生を歩んでいただきたい一心だ。
「民報サロン読んでるよ」。
小学校の同級生が連絡をくれ、うれしくて飲みに行った。
作文の宿題が苦手だった私が、まさかこんなご縁をいただけるとは。
まだまだここから人づくり。
芳賀大峰