#3 一生修行 一生青春

「ブオォー」法螺貝の音が中野山に響き渡り、身震いして整列する修行僧。白装束を身にまとい梵天を持って静かなる覚悟で滝つぼへ向かう。気温は零度前後、ブルブルと凍える寒さ。しかし震えてはいけない。「今は修行に集中!」と自分の心の弱さを戒める。

 私は、正月には初詣に行き、イースターにはエッグハントを楽しみ、お盆やお彼岸にはお墓参り、クリスマスにはサンタになりきりと、イイトコドリの無宗教だが、2月28日には修行僧になる。

 この日はお不動様の日とされ、福島市飯坂町にある中野不動尊では無病息災や家内安全を祈願する水行が執り行われる。

 沢山の見物客の間を行脚して滝つぼへの階段を降り、大きく息をついてギアを入れる。すでに冷たい滝しぶきで視界が悪いが、待ったなし。片足ずつ入水。「ウッ」変な声が出るが私語厳禁。如月の新鮮な雪解け水が細胞の一つ一つを開眼させる。水は濁っていて底は見えないし、大小さまざまな石がゴロゴロしていて歩きにくい。20人くらいの修行僧が輪を作る。その頃、足の感覚は冷たさを通り越して、ハッカが目に入った様な爽やかな耐えがたい痛みが襲う。お経をお唱えして「ワー」と言ってお互いに水をかけ合う。側から見ると、寒さのあまり頭がおかしくなったのかと思われるが、決してそうではない。お互いに鼓舞しているのだ。ここまでくると足が自分のモノなのか地球と一体になったのか分からなくなってくる(感覚が麻痺しているのだろう)。

 2人ずつ滝の下へ、ついに水行本番。フルオーケストラの大音量に負けず劣らずの滝の爆音。水と重力の圧倒的な力に負けないようになんとかバランスを保ち合掌、「ヤー」の掛け声で次々交代する。
 びちゃびちゃにぬれた白装束が体に張り付いてどんどん体温を奪い凍りそうになるが、精神力がどんどん鍛えられる。最後に副住職がひと言で締めて順番に滝から上がる。

 足が重い。おそらく地球と自然と一体になれたのだろう(世間一般では放心状態というのかもしれないが、私はポジティブな表現でいきたい)。
 大歓声とたくさんの拍手、スマホの「カシャ」は耳に入ってくるが修行中なので声援に応えてはいけない(そんな余裕もない)。

 無感覚の足に装着されているぬれて重くなった草履や足袋は、かなり脱ぎにくい。四苦八苦してなんとか装束も全て脱いで、温かいお風呂に入浴。一畳半くらいの狭い風呂に矢継ぎ早に修行僧が入ってくるためつかの間だが、温かいお湯に心から感謝する。「あぁ、生きてる」

 私は今年で5回目の修行に参加する。「ご縁があったら二つ返事でやってみる」これは私が留学後、人生の指針にしている一つだ。音楽で表現するだけではなく、人に教えることも仕事にしている私にとって、常に鮮度の良い感覚とアウトプットの多様性が深い学びに不可欠だと考える。そのためにまず自分を磨き続けること、そして何より誰よりも楽しく生きること。

 新しい挑戦は道を切り開いていく、そしてまた新しいご縁が舞い込んでくる。光陰矢の如し。

芳賀大峰